
このところ、セックスが痛くて苦痛です。
更年期は女性ホルモンの減少が原因だと聞いたのですが、セックスすると女性ホルモンの分泌が促されて更年期症状が和らいだりするのでしょうか?
この年になって更年期症状かな?と思うものも出てき始めたので、セックスが体にいい作用を及ぼすのであれば頑張りたいなとも思うのですが…。
夫はまだ求めてきますが、私は性欲もほとんどなく、痛みもあるので正直あまり乗り気になれません。
でも、断ってばかりだと夫婦関係がギクシャクしそうで不安です。
更年期の時期に、セックスとどう向き合えばいいのか教えてください。
A. 更年期のセックスは「どう向き合うか」が大切
セックスに関する悩みは、更年期にとても多い相談です。しかし他人には相談しずらく、1人で抱え込みやすいテーマでもあります。
更年期には女性ホルモン(エストロゲン)が低下することで膣の粘膜が薄くなり、潤いも減少するため、性交時に痛みが生じやすいのです。これらの変化は、この年代の女性にとってごく自然なこと。
更年期に大切なのは、単にセックスを「する・しない」の判断をするのではなく、自分の変化とどう向き合い、パートナーとの関係をどう築くかという視点です。
たとえば潤滑ゼリーの使用や婦人科での相談など、痛みにアプローチする方法はたくさんあります。
「痛いからやめる」という選択ももちろん間違いではありませんが、まずは「痛みをやわらげる工夫」をすることをおすすめします。「セックスをしない」選択は、その後でも遅くはないでしょう。
「セックスで女性ホルモンが増える」というのは本当?
実は、「セックスをすると女性ホルモン(エストロゲン)が増える」という説に、明確な科学的根拠はありません。
しかし、スキンシップやパートナーとの心のつながりによって「オキシトシン(愛情ホルモン)」や「セロトニン(安心感・幸福感に関わる神経伝達物質)」が分泌されることは知られています。
つまり、「セックス=更年期対策」とまでは言えませんが、信頼できる人との心地よい触れ合いが、心の安定や更年期症状の緩和につながる可能性はあるのです。
また、エストロゲンは卵巣からの分泌が主ではありますが、脂肪細胞からも分泌されることが分かっています。そのため、更年期にはある程度の体脂肪を保つこともホルモンバランスの安定に役立ちますよ。
パートナーとの共有
セックスに対する感覚は、年齢・性差・体調などによって大きく変化します。今のあなたが「つらい」と感じているなら、それを我慢してまで応じる必要はありません。
ただし、「痛いからイヤ」「したくない」と言うだけでは、相手も戸惑ってしまいます。
誘いを断る場合は、「更年期に入って体や気持ちに変化があること」「痛みがありつらいこと」「それでも関係性を大切にしたいこと」を、言葉を選びながら丁寧に伝えてみましょう。
こうした話し合いの積み重ねは、パートナーとの関係を深めることにつながります。お互いの気持ちの共有が、この時期のコミュニケーションにはとても大切です。
更年期のセックスのかたち
更年期以降のセックスは「挿入を伴う性交」だけにとらわれる必要はありません。この時期だからこそ、例えば以下のような、安心感や心のつながりを大切にしたセックスのかたちを見つけてみましょう。
- 前戯を中心に、ゆっくりと触れ合う
- オーラルセックスや愛撫で相手を気持ちよくする
- 潤滑ゼリーを使い、痛みを軽減しながら試す
更年期を迎えてこれまで通りのセックスが難しくなったのなら、形ではなく気持ちのやりとりに重点を置いてみましょう。
「こうあるべき」に縛られず心のつながりを大切にして、今の2人に合ったかたちを模索していくことが、これからのパートナーシップをより豊かなものにしてくれるはずです。
婦人科で受けられる治療・ケア
性交時の痛みや膣の乾燥は、エストロゲンの低下により生じる「腟萎縮」が原因であることが多く、放っておくと悪化する可能性も。違和感を感じたら、我慢せず婦人科に相談することをおすすめします。
以下は、更年期に受けられる主な治療・ケアをまとめたものです。
診療・ケアの種類 | 内容・補足 | 費用の目安 (3割負担の場合) | 保険適用 |
---|---|---|---|
局所エストロゲン療法 (膣錠・膣座薬・クリーム) | 膣の粘膜に直接作用。 乾燥・痛みを緩和 | 約1,000 〜 3,000円/月 | |
ホルモン補充療法(HRT) (貼り薬・飲み薬など) | 更年期症状全般に効果。 医師の診断が必要 | 約3,000 〜 7,000円/月 | |
潤滑ゼリーの提案・ 使用指導 | ドラッグストアや病院で購入可能。 手軽に導入できる | 市販 1,000〜3,000円 | |
性機能に関する カウンセリング | 専門の外来 (女性ヘルスケア外来など) で対応可 | 初診 約2,000 〜 5,000円+α | 施設により異なる |
膣レーザー治療などの フェムテック診療 | 自由診療。 膣のハリ・潤い改善に特化。 最新の技術も多数 | 約50,000 〜 200,000円/回 |
デリケートなことですので気が進まないかもしれませんが、医師は女性の体と心の変化をよく知るプロフェッショナルです。自分に合った対処法がきっと見つかりますので、ぜひ相談してみてください。
編集部からひと言
更年期を迎えて身体の変化を感じたり、性欲がわかない、セックスがスムーズにいかない体験をすると、「女性としての終わったのだ」と感じてしまう方も多いでしょう。
しかし、決して「今まで通りにいかない=終わり」ではありません。また、無理に以前のように戻ろうとする必要もありません。
この変化を迎えたとき、それはただ単に、「新しいステップの始まり」というだけです。
まずは、自分自身の心と身体の状態を受け入れ、理解することが大切です。そして、その気持ちや変化をパートナーと丁寧に共有しながら、2人にとって心地よい新しいかたちを一緒に探してみてください。
更年期のセックスは、これまでとは違った豊かさや深い安心感をもたらすこともあります。焦らず、自分たちらしいペースで歩んでいきましょう。
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